MIHOCOLUMN
#55 初秋の湯宿を訪ねて
2020.10.07
#55 初秋の湯宿を訪ねて
連日、仕事で疲れている脳や体をリラックスさせて解放されたいと
人混みを避けながらゆったり四季を感じたい...とかねてより訪れてみたかった
能登半島の突端に近い珠洲市の湯宿「さか本」に。
“おもてなしはございません? ”お迎えもいたしません?
お部屋のご案内とお食事以外は顔を出さない宿主。
賛否両論あると聞きながら訪ねたその玄関の美しさに圧倒されました。
さりげなく庭に植えているコスモスの花が古い釜の脇で主人の代わりに迎えてくれました。
そして床、柱、建具、窓枠、テーブル、全てが漆で拭かれ見事なまでに光輝いているのです。
埃一つなく、無駄に飾らない美しさに ここに決めて良かったと思わず笑みがこぼれます。
窓という窓はまるで一枚の絵のように見え、主人の美学がそこに現れます。
計算された見事な里の自然の庭がその先に広がります。
庭には白鷺が訪れ、小鳥のさえずり、蝶が舞い、庭を流れる小川のような池にあめんぼうが。
自然にあるようで実は大変に手入れされていらっしゃるのが、よくわかります。
広い庭には木造のゲストハウスがひっそりと佇み、ソファーが一台、足を投げだせるチェアが
二脚しかないけれど、窓を大きく開口してまるで自分の別荘だと思わせる。
“ゆっくりおくつろぎ下さい? と聞こえてくるよう。
自分なりに本を読んだり、ぼっと眺めたり。
TVもWi-Fiもつながらない。だからこそ大切な時をおくることができる。
部屋から庭に出て草木の甘ずっぱい香りに酔いしれました。
もちろん、お料理も宿の主人の最高のおもてなし。
この日はこちらで採れた松茸や能登牛、白身魚の澄まし椀など、丁寧に造られた味に舌鼓。
びっくりしたのはお通しのように先に出された紫蘇の実の田楽!
口の中で香りがふわっと広がり、頂いたことのない味わいでした。
湯宿...ですから湯は...もちろん気持ちよい。
窓から見える見事な竹林。美学はまちがいありません。
しかし洗い場の椅子がなく立って体を洗いました。何故?
コロナへの気遣いかも知れませんね。
洗面やお手洗いは共同です。昔の家の情景ですね。
それも又、良しです。
部屋には冷房も暖房もなく、冬場はその為閉じているようです。
私はこの日本の情景の中にGRAND FOND BLANCのパジャマを重ねてみたくて、
家から持っていきました。
夏でも冬でも心地よく体を包んでくれる麻のパジャマは思った通り快適でした。
持ってきて良かった。この宿に麻は似合います。
この宿はまるで利休の茶室のごとく、派手ではなく無駄なものも置かず、
日本人だからこその研ぎ澄まされた美を堪能させて頂きました。
又、季節を替えて訪れたい宿でした。
今度は麻のタオルでも持っていきましょうか。
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